Search By Topic

SEARCH BY TOPIC



人工葉から液体燃料を作れるように

最新の人工葉は、二酸化炭素と水を高エネルギーのエタノールに変換し、自動車のエンジンに直接使用することができます。

文:Prachi Patel
2023年5月25日

太陽光だけを動力源とする新しい装置、つまり人工葉により、二酸化炭素と水を車のエンジンに直接使用できる液体燃料に変換できるようになりました。

Nature Energy誌で発表されたこの装置は、人工葉の最新の進化形です。研究者らは光合成を模倣して燃料を持続的に低コストで生産するこのようなシステムの開発に何年も取り組んできました。これまでの人工葉は、一酸化炭素や水素といった単純な生成物を生成していました。しかし、今回の人工葉は、エネルギー密度の高いエタノールとプロパノール燃料を製造することで重要な一歩を踏み出しました。

ケンブリッジ大学の化学研究者であり、論文の共著者であるMotiar Rahaman氏は、「これは、太陽光を唯一のエネルギー源として、二酸化炭素と水を液体の多炭素燃料( Liquid multi-carbon fuel)に直接変換できる、世界初の独立型人工葉だ」と述べています。

植物は太陽光を利用して二酸化炭素と水から糖分をつくります。このプロセスを模倣するため、研究者らは光を吸収する太陽電池と化学触媒をベースにした人工葉を作りました。ケンブリッジ大学の研究グループは、これまでにもいくつかの人工葉を作ったことがあります。そのうちの1つは、太陽光を電気エネルギーに変換するのに優れたペロブスカイトという種類の材料で作られたもので、水に浮かべて一酸化炭素と水素の混合物を生成することに成功しています。また、低コストで耐水性のあるオキシヨウ化ビスマスという光吸収剤を使った装置では、数週間にわたって水素燃料を生産することができました。

今回、研究チームは、複雑な液体燃料を一度に作ることでこの技術をより実用的なものにすることに成功しました。

彼らのこれまでの装置と同様にこの装置も2つの光を吸収する電極を備えています。1つはペロブスカイトで構成され、もう1つは光触媒として期待されるバナジン酸ビスマスでできています。光触媒とは、太陽光を吸収してエネルギーを作り出し、化学反応の動力源となる物質です。ここでは、バナジン酸ビスマスが太陽光を利用して水を水素と酸素に分解する光触媒となっています。

今回の研究では銅とパラジウムからなる新しい触媒を開発したことが重要なポイントです。研究チームは、この触媒を特殊な3段階の活性化プロセスで処理することで、二酸化炭素と水を液体燃料に変えることができるようになりました。「触媒と光吸収体の開発と最適化、そしてそれらを適切に組み立てることでこれが可能になった」とRahaman氏は言っています。

今のところ、この小型の実証装置は効率が低く、大量の燃料を生産することはできません。研究チームは現在、より多くの太陽光を燃料に変換できるように光吸収体と触媒を最適化しています。

次のステップは、大量の燃料を生産できるように装置の規模を拡大することだとRahaman氏は言っています。また、「大規模に開発することは間違いなく可能で、私たちはすでにそのための作業を始めている。しかし、この技術はまだ初期段階であり、スケールアップにはかなりの時間がかかるだろう」と指摘しています。

成功すれば、この技術で製造されたエタノールは、現在ガソリンに混ぜているバイオエタノールよりも、より持続可能な輸送用代替燃料になると研究者は述べています。糖分を発酵させて作るバイオ燃料は本来農業に使えるはずの土地を占有するため、研究者たちはより良い選択肢を模索してきました。本物の植物から人工の葉に変えることが、その答えとなるかもしれません。

出典: Rahaman, M., Andrei, V., Wright, D. et al. Solar-driven liquid multi-carbon fuel production using a standalone perovskite–BiVO4 artificial leaf. Nat Energy, 2023.